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  • 執筆者の写真ポジティブ・ディシプリン コミュニティ

しつけという目的とともに、もう一つ大事なこと(虐待を知って考える)


ポジティブ・ディシプリンの考え方は3つの柱から構成されています。それは

1)子どもの健やかな発達の研究

2)効果的な育児の研究

3)#子どもの権利

です。

医学も心理学も、当初は病気の原因に焦点(疾病モデル)を当てて研究され、病気の予防に役立つために発展しましたが、その後健康になる要因を解明し強化しようとする視点(健康モデル)での研究も行われるようになりました。

ポジティブ・ディシプリンも、

疾病モデルと健康モデルの研究の発見や成果を背景に構成されています。

今回は、疾病モデルの方から、

つまり子どもの精神的・身体的・認知的・知的・情緒的な問題が起こる要因を知ることを

育児に役立てたいと思います。

子育てでよくない対応と言えば、”#虐待”が今は一般的かと思います。

虐待がなぜ今問題になっているかというと、子どもの虐待死という衝撃も一因ですが

子どもに様々な内容、また程度の影響を与え、まさに身体的・心理的な問題の大きな要因だからです。

厚生労働省の※1「子ども虐待対応の手引き」で以下のようにその影響が説明されています。

低い自己評価、対人関係障害(緊張・乱暴・引きこもり)、栄養・感覚刺激の不足による発育障害や発達遅滞、暴力を受ける体験からトラウマをこうむり、そこから派生する様々な精神症状(不安、情緒不安定)、やけど、骨折、頭蓋内出血、死亡

すぐ発症するものと、思春期や成人になってからと後に発症するものもあります。

“虐待”というと、人により印象に幅があり、本来持つ意味が伝わらないかもしれません。

例えば、2001年の研究(※2「子ども虐待の認識」鈴木ら,2001年)でだいぶ前にはなりますが、

医療施設従事者、看護系短大生、一般大学生525名への質問で

1)親が子どもを叩いたら、あざができた

2)親が子どもを叩いたが、けがやあざは生じなかった

では、虐待だと思うか・問題ではないの回答に大きな差がありました。

具体的には、

虐待であるもしくは虐待の疑いがあると考える人は、1)では73.6%、2)43.4%

問題ではないと考える人が1)では5.1%、2)では26.5%でした。

これは、子どもが受けた傷が目に見えるか否かが、虐待の判断を左右していると思われます。

別の調査(※3「しつけと虐待に関する認識と実態」李ら,2013年)では、6割前後の母親がしつけとして行っていいとした行為は

・大声でしかる

・お尻を叩く

・手を叩く

であり、「叩く」行為については、体の部位によって、虐待の認識に差があることが示されています。

しかし、”虐待”というのは、

目に見える傷を子どもにつける行為という意味ではないですし

特定の部位を叩くという意味ではないです。

「Child abuse」「Ill-treatment」という海外の表現も参考にすれば

本来持つ意味は、親の持つ力の濫用だったり、養育者による適切でない子どもの扱いという意味です。

「子ども虐待対応の手引き」にある次の引用は、養育者が子どもを育てるのに参考にできる視点です。

「虐待の定義はあくまでも子ども側の定義であり、親の意図とは無関係です。その子が嫌いだから、憎いから、意図的にするから、虐待というのではありません。親はいくら一生懸命であっても、その子をかわいいと思っていても、子どもにとって有害な行為であれば虐待なのです。(小林美智子,1994)」

ポジティブ・ディシプリン講座では、子どもがどのように感じるかを体験することができます。

親の意図や視点から離れて、子どもの視点を自分のものにした時、子どもにとって有害な行為や有益な対応に気づくことができます。

有害な行為とは、簡単に言うと、

自分がもしされたならショックなこと・悲しいこと・危ないこと・粗末にされたと腹立たしく感じることかもしれません。

例えば、手を叩く行為は、先の調査※3では68.2%の母親が行っていましたが

ポジティブ・ディシプリン講座では

多くの養育者が、自分が「触らないようにと親しい人に手をパチンと叩かれた」場合、ショックであり、悲しかったり、ひどい!腹が立つと言います。加えて、手を叩かれると、相手との信頼関係が損なわれ、やる気を失ったり、逆に隠れて行うなどマイナスの反応が起きると話してくれます。

ポジティブ・ディシプリンは、

「虐待だから叩いてはいけない、怒鳴ってはいけない」と養育者の手足を縛ろうとするのではなく


子どもへの効果的な育児の方法として

「#温かさ=安全感」と

「#枠組み=情報や学びのサポート」

を与えることを提案しています。

触らないように子どもに教えたいのであれば、

子どもに信頼され、

子どもが意欲的に学ぶために

温かさを与え(例えば、子どもが安心して話を聞けるよう目線を合わせ落ち着いた態度で接し)、

枠組みを示します(例えば、なぜ触ってはいけないのか情報を与えたり、どのように触ったらいいかお手本を示します)。

子どもにとって効果的なしつけを考える時

親自身のの意図(しつけという目的)だけでなく、行為自体にも注目したいですね。

子どもの視点で、自分の行為は

子どもが積極的に学べる対応かな、とか子どもが一緒に学びたいと感じる行為かな

と考えた上のしつけは、

有害な虐待とは全く違い、効果的なしつけとなるとポジティブ・ディシプリンは伝えます。

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