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  • 執筆者の写真ポジティブ・ディシプリン コミュニティ

『子どもの権利』は子どもをわがままにする?


今年は『子どもの権利条約』制定30年

日本が批准して四半世紀のメモリアルイヤー。〜特集記事 第5弾!〜

『子どもの権利』について、いろいろブログを書いてきましたが、

私たちが、子どもの権利が行き渡っている社会について知っているわけでも、教えようとしているわけでもありません😄

この権利は、考える必要があるもので、努力が必要なものでしょう。

平和と似ているかもしれませんね。

平和をどのように考えるか、例えば「戦争がないこと」と決めてしまうと、計ることができ、ある意味ゴールがあるのですが、「公平で公正な社会」とすると、常に試行錯誤し努力が必要になります。

子どもの権利は、新しい概念でもあり、きっと決まった形や完成形はなく、それぞれの国や自治体、機関、学校、そして家庭で編み出していくものだと思います。

『子どもの権利』と言うと、子どもが自分の権利ばかり主張しわがままになるんじゃないかと考えませんか?

以下の指摘は、大切な視点を与えてくれます。

子どもにとって最も必要なのは〈関係〉であって、「権利」の名の下で孤立化された〈利益〉ではない 。※1

自由の障害は他人の自由なのである、と言われます。権利の障害もやはり他人の権利でしょう。

『子どもの権利』を考えるときや、子どもが権利行使できるよう教えるときに、自分の権利と他人の権利の<関係>を念頭に置きたいですね。

であれば、

>子どもが自分の権利ばかり主張し、わがままになる

と言えるでしょうか。


様々な違いを当然に持つ大切な子どもたち

例えば

子どもの主張に耳を傾けるとき、一方で子どもにも親の話を傾聴するスキルを養います。

乳児期は、子どもが不快感を感じたとき、子どもだけの力で不快感の回復はまず無理です。おむつも変えられないし、捕食もできないです。まずは親が応答し手助けします。子どもは養育者が来ることによって安心が回復される経験を重ねます。その際、嗅覚や触覚だけでなく聴覚でも、安心基地である養育者を感じられるように、話しかけることから、子どもの傾聴スキルを育てることができるでしょう。

幼児期になって、子どもの不快感を回復するために親は引き続き応答しますが、

加えて「嫌だったねー。嫌な時は、ママに『嫌だよ。(例えば)自分でくつをはきたいの』って言ったらいいよ。さあ、言ってみて」と子どもの成長に応じて要求することができます。

更に、「ママは、〇〇ちゃんに泣いて怒って叩かれるのは嫌だな。痛いな。だから今度から、お話しして教えてくれる?」と親の話を傾聴するスキルを養うことができます。

#子どもの意見表明 の権利を尊重しつつ、親自身の意見表明の権利も尊重します。

家庭で、このように、子どもが自分と他者との<関係>を通して『子どもの権利』を大切にする機会はたくさんあるので、前向きなしつけで教えます。

そして、欲求や衝動性を子ども自身が、相手との<関係>のなかで、統制できるように手助けします。そのように社会性を身につけたら、

>子どもが自分の権利ばかり主張し、わがままになる

でしょうか。

次に、子どもと社会との<関係>にも目を向けてみます。

子どもの側から見た場合、自然になついて甘えられる実の親は非常に貴重な存在である。

マーンフィーの言うところの「子どもを救うためには家族を救うべき」という思想的基礎には、実の親子関係は子どもの保護・教育を受ける利益のためには非常に重要であり、出来る限り切り捨てるべきではない―家族を救うことこそが本当の意味での虐待防止に繋がるという考え方がある。※1

親は、子育て中に、子どもを守るためにかなりの労力を向けるため、自分自身を守ることに手薄になります。人間の集団は、親に子ども世代を育ててもらうために、親と子どもを、地域や親族で守ってきました。

非常に未熟な状態で生まれる人間の赤ちゃんは、動物の中で特殊です。それは親子を地域や血縁者が守ることによって可能にしてきました。親子にとって社会との<関係>は重要なものです。

『子どもの権利条約』の前文には、以下が述べられています。

家族が、社会の基礎的な集団として、並びに家族のすべての構成員特に児童の成長及び福祉のための自然な環境として、社会においてその責任を十分に引き受けることができるよう必要な保護及び援助を与えられるべきであることを確信し、〜 ※2

以前のブログでも、記載しましたが

少子化・核家族化により、共に暮らす親族から育児を学ぶことができない現代社会では、育児も当然学べるようペアレントトレーニングが大切だと常々感じます。それは、社会において家族がその責任を十分に引き受けることができるよう必要な保護であり支援だと考えます。『ポジティブ・ディシプリン』は、非暴力の前向きなしつけに必要な情報や演習で構成された養育者のしつけ支援プログラムです。

佐賀県や沖縄県など各地より、ぜひこの講座をやって欲しいと、養育者の方がご連絡をくださいます。養育者の方が身近にアクセスできるよう、豊島区と港区だけでなく、自治体にこのプログラムを取り入れてほしいと願います。ちなみに『ポジティブ・ディシプリン』プログラムは、一般養育者向けですが、虐待をしてしまう親の回復のためのプログラムを提供している団体もあります。

身近な自治体へ、自治体予算に大きな影響を持つ議員へ、養育者支援プログラムを取り入れるよう働きかけていただければ幸いです。それは『子どもの権利条約』に述べられている通りの『子どもの権利』を尊重する行動と言えるでしょう。

『子どもの権利』を尊重することは

>子どもが自分の権利ばかり主張し、わがままになる

ものではありません。

安心して親は子育てができ、子どもも成長するための権利です。子どもから、またその子どもが大人になった時、社会もまた育った子どもから恩恵を受けます。分かりやすい例示をするなら、私たちの老後にお世話してくれるのは、今育っている子どもたちです。

お茶の水女子大の元学長、本田和子さんは書籍で以下のように述べています。

弱者をその弱さにおいて劣位に位置付け、優劣の序列化のもとで優者に「保護」の責任を課すのでなく、優劣という序列を解体した上で、弱者は一人前に生きるための正当な権利として特別な対処の仕方を要求する。障害を負うた人、あるいは高齢者が体現するべき「権利主体」としてのこうしたありようが、いま「子ども」にも求められているのではないか。(略)

新しい「子どもー大人関係」が、いまだ模索途上にあることを物語るものといえよう。※3


子どもの権利の大きな4つの分類

子どもの権利は、新しい概念でもあり、きっと決まった形や完成形はなく、それぞれの国や自治体、機関、学校、そして家庭の<関係>のなかに編み出していくものだと思います。

一緒に、『子どもの権利』が大切にされる社会を作っていきませんか。

※1 池谷和子2014 「アメリカにおける家族の崩壊と『子どもの権利』 ― 児童虐待防止法制度を素材として― 」

※2 ユニセフのウェブサイトより 「「子どもの権利条約」全文」

※3「子ども100年のエポック」本田和子

ポジティブ・ディシプリン コミュニティ


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