発達心理学の専門家が、良著だとご紹介していたので、
「子どものうそ、大人の皮肉」松井智子・岩波書店
を拝読しました。
3歳のお子さんの子育てをする研究者が書いただけあり、3歳児や子どものコミュニケーションの発達を知るのに、とても役立つと思いました。
私が感じたことなど、書籍の内容も交えて、お話ししていきたいと思います。
書籍ではたくさんの研究例を通して、子どもの発達の段階が紹介されます。たとえば、電話コミュニケーションの研究。電話では、目の前の状況を見て共有できない、指示語(あれ、これ)もジェスチャーも表情も使えませんね。ですから言語化が必須で、興味深い実験ができるのでしょう。
子どもたちが上手に電話でコミュニケーションをすることができるのかを調べた研究がある。3〜4歳児の場合、コミュニケーションがほとんど成り立たないが、7〜8歳になると、かなり正確に情報伝達ができるようになるそうだ
3〜4歳は目の前の現実に注意がひっぱられるので、他の人の視点から物事を見ることはまだ難しいのです。ですから、電話口の向こうの人が、自分と違うものを見ていることをありありと思い浮かべることはできませんし、使う言葉の概念もあいまいなところがあります。よって、すごくたくさん話せるように見えますが、3歳児が伝えることができる内容にはまだ限界があるのです。
言葉で「好き」「きらい」「ほしい」など言えるようになるのは2歳ごろ、「うれしい」「悲しい」「怒ってる」などという言葉は3歳から6歳くらいまでの間に使えるようになるようだ。複雑な感情になればなるほど、概念を理解してそれを言葉にする時期は遅くなる
2歳はイヤイヤ期でなんでも「イヤ」って言う、とよく言われます。
でもそれは、発達によって可能になったことで、
「イヤしか言わない」と否定的に見なくて良いと思います。
「イヤ」が登場したら、
子どもが頭で考えられるよう安心感を与え、
子どもの興奮が落ち着いたときに
「イヤなのね。これがイヤ?これならいい?」とか「〇〇ちゃんは、怒ってるのかな。**されて怒っているからイヤなのかな」とか話をして
「イヤ」を解きほぐす作業があるといいでしょう。
「イヤ」という気持ちは、子どもの自立心や感性から沸き起こるものが多いと思いますので、「イヤ」は子どもの感情表現や意見、思考に育てていくことができます。
ここまで言葉の発信の話をしましたが、次は言葉の理解の方を見ていきたいと思います。
別の実験では、子どもがミニチュアの部屋を見せられ、その中に隠れているものを8つ探すように頼まれるのですが、隠し場所の説明の詳しさが違います。
例えば、お部屋には帽子が2つあるのですが「どっちかの帽子の中」という説明と、「テーブルの下の帽子の中にある」というような説明を受けます。普通は後者をすぐ探しますよね。でもそれは4〜5歳になってからでした。
驚いたことに、3歳児の反応はまったく逆だったのである。正確な情報は、正確であるぶん、情報が複雑である。あいまいな情報は、逆に単純である。その結果、3歳児の場合は、情報の単純さに反応し、あいまいな情報をもらったときに、より早く探し始めてしまったと考えられる。3歳児には、場所や位置に関する情報を処理することだけで大変で、情報があいまいかどうかを機にする余裕はなかったのだろう
私たち人間は、「相手の話を聞く」のが当たり前のように生活していますが、実はそれは大変複雑な作業をしています。
人間の情報処理にかけられる労力が有限である〜(略)。たとえば誰かが話しかけてきたのでそちらに注意を向けると、他の人の話を集中して聞くための処理資源が十分に残っていないという状況になるわけだ。話し言葉を聞いてその内容を理解するには、言葉を音として処理し一時的に保存する短期記憶や、それを意味ある情報に統合する中央実行系とよばれる作動記憶(ワーキングメモリ)の働きが不可欠だと考えられている。それらの認知システムの処理資源は有限であり、その容量を超えると、情報処理ができなくなるということになる
この情報処理のお話は、大人の話です。
普段、私は料理をしながら、ワークショップの練習をし、家族の問いかけに反応することができます。そんな私も、パソコンに向かって集中して仕事をしていると、子どもの問いかけに生返事をしてしまい「聞いてないでしょ!」と言われて、初めて気付くときがあります。
大人でもそうですから、3歳児はこの脳の部位は発達のはじめの段階であり、もっと情報の処理容量が少なくなります。子どもは、大人と理解力や記憶力は違うのです。
この本を読んで、私は自分の子育てを思い出し、子どもに無理難題を言っていたことをふり返ります。3歳頃、人の気持ちが分かって当然と言わんばかりに責めましたし、片付けができない子どもにたくさんやるべきことを言い渡して、自分は食事を作るなど他のことをしていました。そして、私が言ったことの半分もできていないと、子どもが怠けていると思い、またたくさんのことを注意していました。

#子どもの感じ方・考え方を理解する と、
子どもの発達からすれば無理なことと可能なことを分別することができ、
子どもに無理な期待をして無駄に怒ることもなくなり、
子どもの自信を無駄にくじくこともなく、
効果的に着実に子どもに教える方法を考えることができます。
ポジティブ・ディシプリンでは、0〜18歳までの発達段階を学びます。
特徴的な考え方や感じ方が見られる世代ごとに、8つの発達段階に整理し
発達(能力)がどのように積み上がっていくか、
この年代の親子の典型的な衝突(例えば2歳なら自分でやりたがる、イヤというなど)は何か知ることができます。
そして、子どもに暴力や罰をせずとも教える方法を考える練習を何度もし、
親子の衝突を解決するスキルを身につけていきます。
大人になっても学びは積み上げと繰り返しの練習です。そのためポジティブ・ディシプリンのプログラムは18時間を要します。
このブログを読んでくださっている皆さん、焦らず、一緒に暴力も罰もいらない前向きなしつけ『ポジティブ・ディシプリン』を練習していきましょう。
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