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  • 執筆者の写真ポジティブ・ディシプリン コミュニティ

きょうだい喧嘩、どうする?

暴力も罰もいらない前向きなしつけ『#ポジティブ・ディシプリン』では、

子どもの#発達段階 について丁寧にガイダンスをします。


何も知らない土地に地図もなく旅に出るのと、事前に地図や土地の情報があるのとでは

旅する時の不安や緊張、ショックはかなり違いますよね。

同じように子育てという長い旅でも、多くの親子が直面する問題や衝突、大人が戸惑う子どもの変化を事前に知っておくことで、対応の計画を立てることもできるし、突然の不安と緊張に襲われることも軽減されます。


だから、『#ポジティブ・ディシプリン』プログラムでは、#発達段階 を学ぶのに、様々な工夫をして、時間をかけて楽しく学べるように計画されています。


子どものきょうだい喧嘩 で、仲裁したり怒ったりで、もう嫌!と、お話される方は多いです。調査でも、子どもの人数と育児ストレスは関係していることが明らかにされています。

今回は、兄弟姉妹がいるとどんなことがよく起こるのか、どんな変化があるのか、言わばきょうだいの発達段階をご紹介します。子ども達に囲まれ、奮闘されている養育者の方の心の準備に役立てて頂ければといいなと思います。



我が家も、子どもが二人いますが、

小さい頃は下の子が上の子のおもちゃを取る

話せるようになると、あっちの方が多いとかズルイとかモメる

もっと大きくなるとお互いこれでもかと相手を傷つける方法で、ケンカする

とお陰様で賑やかで、ケンカを聞いているだけで疲れ果てる時がありました。

「モメ事」としては、ずっと続いているような気がしますが

でも、少し具体的に見ると、きょうだい関係は段々と変わっており、その変化を見つめることができると、「モメ事」と「成長の手応え」をバランスよく感じることができます。


では、

「ヒト乳幼児のきょうだい関係」(小島,2002)という論文から、きょうだい関係で特徴的なお話を抜粋します。


1.きょうだい関係のはじまり


下の子が生まれると、上の子に様々な問題行動が起きやすい。

※以下、youngerとは年少の子どものこと、olderとは年長の子ども(兄や姉)のこと。

母親の入院中には、空想的な遊びが増え、その中でyoungerに対する攻撃的な発言や行動が頻繁に見られた。また、母親の入院中には夜泣きの出現が多く、たびたび夜間に目を覚ますことも確かめられた。
youngerの誕生の前後にみられるolderの行動の変化について(省略、以降〜と記載)赤ちゃん返りに該当する行動の出現は全体の7割で報告された。一方、youngerに対して、押す・つつく、人形を奪うといったネガティブな行動が見られたのも全体の約半数に登り、ついで活動の低下や引きこもりが約4割で報告された。
出産から1ヶ月頃の時期での母親の疲労感はきわめて高く、精神的にも不安定な状態になりやすい。Olderはこうした変化の中で多大なストレスを感じ、様々な問題行動を取るものと思われる

「出産は素晴らしい!幸せでしかない」というイメージの方もいらっしゃるかもしれませんが、産後の体と気持ちは、養育者(父親も!)にとっても、いつもの自分とは違う不安定さを持つのは、当然でしょう。兄や姉になる子どもも、言葉で事前に説明されていたとは言え、突然母親が入院で家にいなくなる現実は、言葉での理解をはるかに超えて負担でしょう。

母親自身も、子どもも、守られる必要があります。

出来るだけ子どもに安心を与え、母親も安心できる環境を手に入れたいですね。


この大きな変化に伴うストレスフルな期間には、子どものネガティブな行動が生じるのは、上のように一般的です。同じように、母親も、ネガティブな養育態度があらわれる可能性があります。でも、そんな一時的なネガティブな行動を、「化けの皮が剥がれ」「苦しい時こそ、その人の本当の姿がわかる」と、その人の本性だと思わないで欲しいのです。


子どもは安心感を与え、何度も何度も教えれば、攻撃的な行動は時間をかけて落ち着くことが多いでしょう。

親も、図々しいとか、かっこ悪いとか、人に迷惑をかけているような気がしても、誰かの助けを得ましょう。「借り」だと感じ居心地が悪いかもしれませんが、きっとその後の人生で、お礼やお返しができる時がきます。もしかしたら、自分を支えてくれた人の何倍もの人達に、役立つ仕事や活動をするかもしれません。人間の子育ては一人ではできません。集団でないとできません。この時期を乗り越えましょう。

youngerの誕生以降に見られるolderの問題行動は、時期を経て様々に変化する。〜誕生から8ヶ月を経る頃には、youngerとの対立やyoungerへの攻撃が一般的になる。Youngerの運動機能が高まることにより、olderのお気に入りのおもちゃへの侵略行為が繰り返され、これがolderの怒りをもたらすものと思われる。
olderの問題行動には〜youngerが誕生する以前から親が率先してolderのストレスを取り除くようサポートすることや〜親がyoungerの行動の背景にある意図や感情を、積極的にolderに伝えること、などが問題行動の出現を抑える上で効果的だと考えられている。

2. Youngerが2歳頃になるまでのきょうだい関係

Youngerが生後半年を過ぎ、徐々に運動機能が高まってくると、youngerからolderへのネガティヴな関わりかけはいっそう増え、2歳ごろにかけては、身体的な攻撃がきょうだいの間で頻繁に交わされるようになる。(略)だが、Kendrich and Dunn(1983)によると、youngerが8カ月齢の時に比べて1歳2カ月齢のときには、母親の介入は減少し、このことは、母親が少しずつきょうだいの争いの介入を差し控え、自律的な解消を求める方向にあることを示している。
youngerが1歳から2歳前後までの時期には、youngerからolderへの関わりかけは、ネガティヴなものと同様に、ポジティブなものも増える。

いつまでモメるの〜!と思った方もいらしたかもしれませんが、やっと「ポジティブなもの」が出てきましたね。養育者が、食事・排泄・遊び・慰め全てをやる時期から、きょうだい同士で遊ぶという嬉しい時期がやってきます!ただ、一緒に遊ぶとモメることも必ず付いて回ります(笑)


もう一つ、母親との分離や知らない人との対面状況という、ストレスがかかる実験結果から

母親の退室後、全体の約半数のolderがyoungerの不安を取り除くことを目的とした世話行動を示すことがわかった。〜世話行動が取れるolderは、視点取得能力が優れており、youngerの内的な状態をよりよく理解できるのではないかと考えられている。

年長の方の子どもでかなりの子が、親のいないところで、下の子に優しくできるのですね。養育者には見えていないところで、成長が発揮されている可能性があります。

対人的交渉スキルの中で、ある二者の関わりに割って入る行動は、生後1年目頃から2歳頃までにかけて、急速に上達する。このスキルの獲得に、きょうだいの存在が効果的な役割を果たすという知見がある。

私のように、子どものきょうだい喧嘩の仲裁をして、うんざりしてしまう養育者の方もいるでしょう。でも、その行動はムダにはなりません。生まれて数年の経験の少ない子どもには、人の心の機微や行動の背景など目に見えないものを想像するのは、当然難しいです。それは、何度も経験して、何度も理解する機会を得て、長い月日がかかって理解できるものです。きょうだいがいるということは、経験値をグッとあげます。


長くなってきましたので、次で最後の引用にしたいと思います。

olderとのネガティヴなやりとりにおいては、母親は社会的なルールや内的状態に言及することも多く、しても良いこととしてはいけないことの境界線や他者の感情の理解に大きな役割を果たすものと考えられている。

続きは、また次回のブログで😄



引用:小島康生,2002,「ヒト乳幼児のきょうだい関係」

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